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薬師如来(バイシャジャ・グル)

クメール バイヨン様式 12世紀末~13世紀初
材質:青銅鍍金 高:9cm(展示台含 高:11.5cm)

原語Bhaisajyaは、薬・医王を意味し、guruは、尊者・尊師などの
二語で薬師となり、掌に薬壺をもっているほかは、仏陀(釈迦如来)
と姿・形は同じでよく似ています。

偉大な仏教王であるジャヤヴァルマン7世(在位1181~1218)
は、102ヶ所の施療院(病院)の施療院碑文で、全ての施療院の
祠堂に薬師如来を安置したことが述べられています。

この作品は、偏担右肩に右手でマーラ(魔衆)を打ち負かす
蝕地印を結び、腹前では左手の掌の上に、恐らく小さな薬壺を
表現しているようで、その為、薬師如来であると思われます。
蓮華座から両膝をはみ出させ半跏趺坐の形で坐しています。
後ろ姿のどっしりとした腰つきなどにジャヤヴァルマン7世の面影を
感じさせる、クメール青銅作品ではで希少な鍍金を良く残す作品です。

ジャヤヴァルマン7世は、それまでの病院を再編成し、自身が病人
の療養と薬剤の供給に携わり、碑文においても「身体を冒す病は
心も蝕む、民の苦しみが大きくなれば王の苦しみもそれだけ大きく
なる」と述べています。

ジャヤヴァルマン7世はクメールの諸王の中では肖像が残され、
姿、顔立ちの分かる唯一の王として知られています。

ジャヤヴァルマン7世はクメール王朝の偉大な王として、現在でも
病院はもとより、さまざまな場所でその肖像が安置され、カンボジア
文化芸術省の紋章も王の肖像がデザインされています。